蔵の街とちぎ 大毘盧遮那殿 満福寺(満福密寺)

世事法談

 この「世事法談」は、当山の寺だより「まんだら通信」の「世事法談」の欄に書き続けてきたものです。毎年、新年・5月・9月(お参り月)に折にふれた話題に住職が保守の立場からコメントしたものです。

平成23年(2011)

■新年号より■

●敬礼三宝 謹賀新年
鎌倉時代の弘長2年
京都醍醐寺の朝海法印がこの地に来て
大平山の山麓に小堂を建てて満福寺とし
日光修験の根拠地としてから750年
幕末に大火で全山を消失してから150年。
神仏を崇敬し、菩提寺への帰依厚き檀信徒各位のご信助により
ここにようやく平成の大復興
●日本のお正月は、
松飾りを飾ってお屠蘇とおせち・お雑煮ではじまる神事。元日は一年で最初の朔日(ついたち)。毎月一日は祖霊参拝の仏事。年の始めに心を新にし、神仏に今年一年の多幸を祈ります。貧しい時代、報われない時代、先人も皆そうして苦難をしのいできました。社寺に詣で神仏に祈るは「吉」、社寺を避け神仏に祈らざるは「凶」。
 吉凶はるかにあらず、心中にして即ち近し。
間口十一間×奥行き八間、当山の歴史と寺格にふさわしい本堂が完成まぢかです

■春号より■

●未曽有の大震災
1000年に一度の大地震と津波が
東北の厳しい風雪に耐えながら、まじめにがまん強く生きてきた
罪なき多くの人たちの命と財産と家族と職場と友人・知人を
一瞬のうちに奪ってしまいました
そこに東電福島第一原子力発電所の深刻な事態と放射能汚染・風評被害
突如襲った最大不幸にもめげず、復旧・復興にいそしむ東北の皆さんに
どうか神仏のご加護がありますように。
●このたびの大震災で、
檀信徒の皆様にも大なり小なりの被害があったものと拝察し、心よりお見舞い申し上げます。大震災から70日が過ぎましたが、お葬式もできないまま仮埋葬された幾千の遺体、まだ発見されない何万もの行方不明者、長期間の避難生活に疲れ切った人たち、助かったものの避難所で亡くなって行く人、ガレキの町。東北は今なお修羅場です。
 海べりの町では何軒ものお寺が津波で流されました。本尊様もお墓もお骨もお位牌もどこにいったかわかりません。しかしガレキの山からお位牌をさがし出し、一時帰宅を許されるとまっ先に仏壇のお位牌を取り出し避難所に持ち帰る東北の人たちに、ゆるぎない日本人の心を見ました。頭が下がります。
●栃木市の震度は6強~6弱。
当山では客殿の大広間の大ガラスが振動中に大きく右左に揺れてたわみ、客殿と新本堂をつなぐ廊下の屋根で銅板工事をしていた職人さんは下に落ちそうになり、私も来客と一緒にあわてて外に出ました。
 当山にも少々の被害がありました。旧本堂の屋根瓦が何ヵ所かはずれたり、ずれたり落ちたり、お墓の石塔がいくつもねじまがったり、古く立派な石塔の頭の部分(宝珠)が落下したり、お墓の土台がずれたりしました。
 幸い新本堂には壁にひび割れ一つ入らず、何の被害もありませんでした。あとで気がつきましたが、この大震災は偶然新本堂の耐震テストになり、新本堂は震度6強くらいでは問題ないことが証明されました。合わせて、ほぼ工事を終えていました東側道路に面した塀(鉄筋入りブロック積み)も異常なしでした。
 高根沢町周辺では何軒か本堂がつぶれ落ちました。馬頭町では山の斜面に造成された墓地が崩壊し、墓石もお骨も土砂に埋まったとのこと。東北の知り合い・友人のお寺が心配です。
●当山の鬼門に当る北側道路のかどに、
古くからあった商売繁昌のお稲荷さんと、新しい身代り地蔵さんをお祀りしました。お稲荷さんは、かつて当山の周囲が花街だった時代(大正~昭和)、検番(見番)という芸者さんたちの手配・世話をした屋敷「高島屋」の跡にあったものです。鬼門の方位除けのためにお祀りしました。
●客殿と新本堂をつなぐ新しい渡り廊下もほぼ完成し、
5月の護寺会役員総会に先立ち、役員の皆さんに渡り初めをしていただきました。現在、境内の美観をととのえる工事が進められており、七月のお盆までにはきれいになる予定です。
●かねて老朽化による
部分くずれが懸念されていました北側道路沿いの土塀が、大地震で痛手を受けました。蔵の街とちぎに似合った土塀で写真や絵の愛好家に好まれた土塀でしたが改築が迫られております。このたびの平成の大復興の機会に財源を工面して全面建て替えを考えております。ご理解ご協力の程お願いいたします。つくりとしましては、東側道路に面して完成した塀(鉄筋入りブロック積み)と同じくし、一体感を保ちたいと考えております。
●先にお知らせしました通り、
6月5日に予定しておりました開創750年慶祝大法要を、大震災後の社会情勢や余震などを考慮し、また教区管内のお寺の本堂落慶と同じ日取りになりましたため当山が譲ることとし、11月3日(文化の日、祝日)午後、に延期することになりました。詳細は追ってお知らせいたします。
満福寺 新本堂
満福寺 新本堂
この年の「寺だより」は、全面、開創七五〇年慶祝事業関連の記事に使われ、世事法談に紙面を割くことができませんでした。